待合室から ―奈良だより―

筑紫野市 歯医者 歯科医院 内田歯科医院です。

ある勉強会で次のような話を聞きました。
―― 教養とは、人生におけるワクワクすること、面白いことや楽しいことを増やすためのツールです。よりワクワクする人生、より面白い人生、より楽しい人生を、そして悔いのない生涯をおくるためのツール、それが教養の本質です。教養は、高めれば高めるほど「心のゆとり」が持てるようになります。教養を高めるにはどうしたらよいか。それは「本を読む」「人に会う」「旅に出る」ことです。――
そこで、早速、旅に出てきました。紅葉の奈良です。

訪ねたのは、墨づくり440年の古梅園。創業は、1577年になります。その昔、「墨の香や奈良の都の古梅園」 と漱石の俳句にも謳われました。手作業の墨づくりは、日本ではここだけですので、雑誌やTVなどでご覧になった方も多いと思います。

のれんをくぐり、荷物運搬用のレールに沿って土間を進むと採煙蔵のある中庭に出ます。蔵には窓がなく、三方の壁上下2段に200もの灯りが浮かび上がります。菜種や胡麻などの純植物油を土器に入れ、芯に火をともして、覆いについた煤(すす)を集めます。炎の大きさで煤の質が決まるので、15分毎に皿を回して、油を差し、灯芯を換えます。その間にイグサの芯を撚って灯芯を作ります。

蔵の向かいの土間の大きな釜では、動物の骨や皮を原料とした膠(ニカワ)を溶かします。煤とニカワと香料をあわせ、手で練り、足で踏み、光沢が出るまで練りあげ、梨の木から作った墨型に入れます。職人さんは全員まっ黒です。墨型から出した湿った墨は、くぬぎの木灰の中で乾燥させます。1日目は、水分の多い木灰。2日目以降は、徐々に水分の少ない木灰の箱に移していきます。大きさにより1週間から1ヶ月かかります。急激に乾燥させると、ひび割れの原因になります。それから、わらで編んで天井から吊るして半月から半年、室内乾燥。乾燥後、墨は、7割の大きさになります。それから、1つずつ水洗し、上薬を塗り、蛤の貝殻でよく磨きます。墨づくりは、ニカワが腐らない11月から4月6日までの寒い間。

4月6日、その日は、中庭の桜の下で花見をして、お互い労をねぎらうそうです。墨づくり体験をすると作業現場も見せてもらえます。見学すると、すっかり墨に魅せられ、紺碧という藍を入れた墨を購入しました。やる気満々で帰宅しましたが、断舎離で我が家には、もう硯(すずり)がありませんでした。

(株)古梅園  奈良市椿井町7番地
土日祝日 定休
Tel 0742‐23‐2965